フラワーランドスケープ ~イングリッシュガーデンの新しい試み事例~

 皆さん、花のある風景は好きですか?

 新型コロナウイルス感染防止のため「ステイホーム」が推奨される中、ガーデニング人気が高まっています。

 世界にはいろいろなガーデンスタイルがありますが、2020年広島市で開催された全国都市緑化フェアで挑戦した「大面積のミックスボーダーガーデン」の花の植え方についてお話しようと思います。

ミックスボーダーガーデンとは?

 ボーダーガーデンとは、イングリッシュガーデンのスタイルのひとつで、塀や小道に沿って植物を植える帯状のガーデンです。草丈の高いものは塀などの壁際、低いものは手前の道沿いに、パッチ状に植えていきます。高さの違いによる立体的な構造のため、実際の空間よりも奥行きが感じられます。また整形的ではないため、自然風な景観となります。 ミックスボーダーガーデンは、草花だけでなく灌木やカラーリーフなども組み合わせて植栽します。それによって、ガーデンはより複雑で深みのある表情となり、季節も長く楽しむことができます。

新しい試み

 2020年、広島市で開催された全国都市緑化フェアで創作した「はなのわ花壇」は、旧広島市民球場跡地のスタンドの形状に沿って造成した立体花壇です。バックネット裏からライトスタンド、レフトスタンドに向かってエリアを区切り、赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の虹の七色で構成しました。球場のスタンド跡沿いに、延長約300m、奥行きは4mあり、ミックスボーダーガーデンとしては日本最大級の大きさとなりました。

 植栽デザインでは、ミックスボーダーガーデンの植栽手法に日本庭園の景観演出手法を組み合わせた、新しい試みを行いました。

はなのわ花壇 断面図

「はなのわ花壇」の植栽手法

 ミックスボーダーガーデンでは、花壇全体をレイヤの重なりとして捉える考え方があります。高さ、色などの要素をレイヤとして捉え、レイヤの重なりにより景観を構成するという考え方です。レイヤの重なりによって、全体的な景観の統一感は図りつつ、レイヤ同士の重なりが単調にならないような配慮が必要となります。

 具体的には、4つのレイヤ(①~④)を設定して以下のような方法で植えました。

植える順番:レイヤ①→レイヤ②→レイヤ③→レイヤ④

配植模式図

レイヤ①

・高茎で色がしっかり出る植物を用いて花壇の骨格を作ります。

・日本庭園で例えると、小高い丘のような役割です。

レイヤ②

・レイヤ①の補助骨格となります。①と同様に高さ、色で目立つものを選びます。

・面を区切るように配置します。

レイヤ③

・レイヤ①、レイヤ②を巻き込むように、低径の花を面的に配置します。

・レイヤ①、レイヤ②の背面まで配置すると、奥行きが感じられます。

・日本庭園で例えると、水辺や州浜のような役割です。

レイヤ④

・花壇前面の根締め(ねじめ)となります。

・低茎のカラーリーフなどを用います。

感動を分かち合った花壇

 出来上がった「はなのわ花壇」は、コロナ禍ではありましたが、期間中、多くの方に喜んでいただけました。感動した来場者の方が花壇の前でただただ立ち尽くす、そんな光景も幾度か目にしました。 

 今回紹介したミックスボーダーガーデンの花の植え方は、ご家庭の花壇でも応用可能です。

 また、「はなのわ花壇」のような規模の大きなフラワーランドスケープにご興味を持たれた方は、是非当社にお尋ねください。いろいろご協力できると思います。

 一緒に感動体験を創っていきましょう!

Written by 高瀬