特集 カーボンニュートラルは産業革命だ #1

Contents (記事内容) 

  1. 世界平均気温が上昇するとどうなるの?
  2. 平均気温が上昇すると国家間の問題にまで発展してしまう?!
  3. あまりに急激な温度変化が生み出す真の脅威
  4. 「緩和」と「適応」の2本柱で温暖化に立ち向かう

はじめに

地球温暖化とは、大気中にある二酸化炭素(CO2)やメタン、フロンなどの温室効果ガスが増え、宇宙に放出されるはずの熱が地表にたまり過ぎた結果、ある一時期またはある場所の気温が上昇したり、地球全体の気候が変化することです。

CO2の排出が急激に増え始めたのは、18世紀の産業革命以降のことです。石炭や石油などの化石燃料を燃やし、たくさんのエネルギーを利用するようになった結果、大気中のCO2が急速に増加しました。

これが、地球温暖化を引き起こす、主な原因と考えられています。

出典)全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト

世界平均気温が上昇するとどうなるの?

出典)全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト

地球の平均気温が変化することにより、私たちのくらしや環境、産業などに、さまざまな変化や影響が生じることが懸念されています。

現在までに、世界の平均気温は産業革命前よりもすでに1℃上昇しています。

このままの経済活動やライフスタイルを続けた場合には、21世紀末に4℃前後の気温上昇が予測されています。気温が上昇していくとどうなるのでしょうか?

私たちは、日々のくらしの中でその予兆を感じ始めています。毎年のように集中豪雨、豪雪などがニュースとなっています。この先1.5℃、2℃と気温が上昇していくと、影響がさらに深刻化していくことが懸念されます。

地球温暖化など気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2018年10月、「1.5℃特別報告書」を発表しました。この中では、2℃と1.5℃のわずか0.5℃の違いでさえ、海面上昇や酸性化、また、熱帯性の感染症の拡大を引き起こすと警鐘を鳴らしています。もはや2℃に抑えられたとしても、ある程度の影響は避けられません。

平均気温が上昇すると国家間の問題にまで発展してしまう?!

IPCCの第5次評価報告書は、このまま気温が上昇し続けた場合のリスクを、次のように示しています。

  • 高潮や沿岸部の洪水、海面上昇による健康障害や生計崩壊のリスク
  • 大都市部への内水氾濫による人々の健康障害や生計崩壊のリスク
  • 極端な気象現象によるインフラ機能停止
  • 熱波による死亡や疾病
  • 気温上昇や干ばつによる食料不足や食料安全保障の問題
  • 水資源不足と農業生産減少
  • 陸域や淡水の生態系、生物多様性がもたらす、さまざまなサービス損失
  • 同じく海域の生態系、生物多様性への影響

そして、これらの8つのリスクは、気温の上昇の度合いによって、複合化して、さらなるさまざまな影響を引き起こす可能性があると指摘されています。

そのほか、21世紀中の地球温暖化は、極端な異常気象と海面上昇の長期的な影響の両方によって、大規模な人々の移住、動物や植物の絶滅をよぎなくさせると予測されています。

また、温暖化が多くの国の重要なインフラや領土に及び、都市が消滅してしまうなどの影響は、国家安全保障問題に発展するおそれがあります。

このままの勢いで気温上昇が続くならば、温暖化は国の安全保障にまで関わる問題であるとIPCCは報告しているのです。

あまりに急激な温度変化が生み出す脅威

過去約100万年の間に、地球上には複数回の氷河期が存在し、寒冷な期間と、その間の温暖な期間(間氷期と呼ばれる)が繰り返されてきました。

最後の氷河期から産業革命前にかけて、約3~8℃の平均気温の変化があったとされています。

しかし、この間に生じた気温変化は、「急激な気候変動」と呼ばれる時期の例外を除けば、約10万年という自然のサイクルの中で起きてきた自然現象です。

それに比べ、人類の活動に起因した、現在の地球温暖化による気温上昇は、とても短期間で起きています。そのため、多くの野生生物が環境の変化についていけず、減少・絶滅するおそれが非常に高いとみられています。

では実際に地球温暖化が進むと、どのような面で、どのような影響があるのでしょうか。

「①自然環境」「②水環境」「③くらし環境」の3つに分けて見てみましょう。

①自然環境

出典)全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト
陸域や淡水の生態系が変化する

野生の生きものたちの危機は、地球上のあらゆる生き物を支える自然の崩壊へつながります。生育に適した気温や降水量のある地域に育つ植物は、気温や降水量が変化すると、生育地域を変えざるを得なくなります。

しかし、植物の中には温暖化のスピードが速すぎて、移動が追い付かない種も出てきてしまいます。それに伴い、植物に依存して生きる動物も、生息域を変えなくてはならなくなり、変化に対応できない種が減少・絶滅する可能性があります。

森林火災が増える

乾燥化が進む地域では森林火災が増え、野生生物の生息地が広く失われるおそれがあります。

発生件数が増えるだけでなく、火災そのものが長期化し、森林が回復不能な水準まで失われてしまう地域が増加するおそれがあります。

多くの炭素を蓄えた樹木からなる森林の焼失は、大気中への大量の二酸化炭素の放出を伴うため、これが地球温暖化を、さらに加速させてしまう可能性もあります。

湿地の自然がなくなる

主に海面の水位が上昇することにより、沿岸部を中心とした地域に広がる湿原や干潟で、塩分濃度の上昇や水没といった被害が出ると考えられています。この結果、希少な湿地環境が、大幅に減少するとみられています。

湿地環境は、健全な淡水資源の母体でもあるため、こうした自然の劣化や消失は、人が農業や工業などで使える水の減少にもつながってきます。

海の生態系に打撃を与える

気温と同様に生じる海水温の上昇は、海のさまざまな生物にも影響を及ぼします。特にサンゴは水温の変化に弱く、地域的に死滅する可能性が指摘されています。

二酸化炭素が海洋に吸収されることで、海水の酸性化が進み、植物プランクトン、動物プランクトン、サンゴ、貝類や甲殻類など、海洋生態系の基盤を担う多くの生物がその打撃を受けると予想されています。

これらは、さらに多くの海洋生物の成長や繁殖に影響を及ぼし、海洋全体の生態系に大きな変化が起きるおそれがあります。

②水環境

出典)全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト
暮らしのための水がなくなる

たくさんの人々が、生活するための水を得にくくなります。特に、乾燥した地域に住む人々や、氷河や雪に生活用水を頼っている人々は、その被害を受けやすくなります。

また、今まで、少しづつ降っていた雨が、一度に降る豪雨に変わると、土壌中に水を浸透させる能力を超えてしまいます。ほとんどの降雨は流出してしまい、地下水に涵養できる量が減ってしまいます。そうすると、地下水が減少し、湧き水なども枯れてしまう可能性があります。

洪水が起きる

嵐や大雨などの異常気象が増えるため、沿岸地域では洪水や浸水の水害がひどくなります。特に人口が集中する都市域では、極端な降水や内水洪水、沿岸洪水、地滑り、大気汚染、干ばつ及び水不足が、人々や、資産、経済、および生態的なリスクをもたらすでしょう。

海面が上昇する

地球温暖化によって海水が膨張し、過去約100年で世界の平均海水面は16cm上昇しており、近年の方が、上昇率が高くなっています。南太平洋の島国では浸水が進み、海岸線が内陸へ入り込んでいます。国によっては、国土全体が海に沈んでしまう危険も増大しています。

③くらし環境

出典)全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト
農業への打撃

気温や雨の降り方が変わると、農作物の種類やその生産方法を変える必要がでてきます。特に経済力の無い小さな規模の農家はこれらの変化に対応するのが難しいため、生産性が下がる可能性があります。乾燥地域においては、土壌水分が減少することで、干ばつに見舞われる農地が増加する可能性が高いとされています。

病気や飢餓が広がる

食料の生産性が下がると、病気にかかる人や、飢餓状態に陥る地域が増える可能性があります。特に食料の生産性が下がるアフリカ地域で影響がひどくなると予想されます。また、熱帯などの伝染病を媒介する生物の分布域が変わることで、免疫をもたない人々に病気が広がり、被害が拡大するおそれがあります。

異常気象が襲ってくる

異常気象による熱波・洪水・干ばつ・森林火災などの自然災害が頻繁に起こり、被害を受ける人が増えると考えられています。自然災害の規模も大きくなり、被害が拡大すると予測されています。

「緩和」と「適応」の2本柱で温暖化に立ち向かう

IPCCの第5次評価報告書は、温暖化により引き起こされる現象に、対応する手段も明記しました。これを「適応」と言います。

これらの温暖化による悪影響は、産業革命前に比べて気温上昇を1.5℃に抑えることができたとしても、ある程度の影響はすでに避けられません。気候変動によって、こうした異常気象が将来は頻繁に発生したり深刻化したりすることが懸念されており、変化する気候のもとで悪影響を最小限に抑える「適応」が不可欠なのです。

異常気象や食糧の生産が落ちるといった温暖化の影響は、適応の手段をとっていくことによってかなり軽減されることがわかっています。

温暖化は、その原因物質である温室効果ガス排出量を削減、森林吸収する「緩和」と、気候変化に対して自然生態系や社会・経済システムを調整することにより気候変動の悪影響を軽減、活用する「適応」の両面からの対応が必要な時期になっています。

出典)絵本 ちきゅうはみんなのいえ

TONZAKOデザインは下記のような時にお声がけをいただいています。お気軽にお問い合わせください。

  • 自社独自のカーボンニュートラルやSDGsへの取り組みをしたい
  • 場所選びや周辺のコミュニティとの関係性づくりも相談したい
  • マルシェができるような庭がある施設が作りたいので運営のことまで相談したい
  • 頭の中にある企画を図面やイメージパース、動画にまとめたい
  • 自治体や行政、各種コンペに挑む協業パートナーを探している

弊社は企画から建築設計、ランドスケープデザイン、開発許可、運営補助等の実績のある、珍しいクリエイター集団です。


次回は、地球温暖化の原因となる温室効果ガスについて見ていきます。