暮らしの道具づくりでお客さんをおもてなし

 歴史の里志段味古墳群(以下、しだみゅー)で通年プログラムとして開催している“暮らしの道具づくり”。指定管理期間は5年間。毎年古墳を偲ばせるようなテーマを設定し、月一回程度のプログラムでどのようにお客さんをもてなせるかを考えます。

 2019年はしだみゅーがオープンした年でもあり、古墳とのつながりを直感的に伝えられる「焼き物(陶芸)」を軸にプログラムを組みました。円筒埴輪や勾玉、古墳型の鉢植えなど、日常生活に古墳テイストを持ち込んでもらうことで、しだみゅーがもつ古墳のガイダンス施設としての役割を果たすという運営者側の目的もわかりやすく伝えることができたと思います。

2020年度のプログラムに込めた思い。

 さて、今年度はどのようなテーマでおもてなしをしているかというと、タイトルにもあるように「暮らしの道具づくり」。竹やホウキモロコシなど、できるだけしだみゅーで用意できる素材を中心に、材料を育て、収穫し、道具づくりを体験していただく。竹ぼうきだって、今の時代、ホームセンターで買えば数百円。竹を育てて作ると、2時間くらいかかる。竹を育てるところから考えると、春に生えたタケノコが伸びたところで伐採するまで数か月はかかるでしょうか。乾燥まで含めると1年2年の保存期間が必要だったりします。

 プログラムでは、実際に竹の伐採や、収穫体験、脱穀など、手作り体験だけでなく、手作りの前の工程も一緒になって体験してもらうようにしています。

 完成品をお渡しすることも、プログラムの満足感に直結する重要なポイントではあります。が、わざわざ自分で材料を採って試行錯誤しながら作る、その過程こそが体験プログラムで伝えたいミソの部分なのです。体験してもらう中で生まれる会話や思いこそが、お客さんが家に帰った時に一番印象に残る「思い出」になるのです。

 ・今の時代は何でも買えるけど、昔は身近な材料でどうやって暮らしていたの?

 ・ホウキにするためにまずは脱穀をしないといけないんだね。

  ・文明の利器ってありがたい!

などなど、今の時代とのギャップをお客さん自身に体感してもらうことで、古墳時代という直接的には体験できない時代のことを、体や手、心で直感的に体感してもらうことができるのです。これらはプログラムを提供する側が一方的に話したり、本や文章で伝えたりしても、お客さんの心にはなかなか届くものではありません。お客さんが体験過程で自ずと思ったり気付いたりすることで生まれる効果だからこそ、2時間というプログラムの中で提供する体験内容が重要になってくるのです。

そんな思いが「暮らしの道具づくり」のテーマには込められています。

Written by しだみん一同