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動物園デザイン 園路2「手すりと観覧空間」

 動物園を歩いていて、目につくものって何ですか?当然、動物の姿は、みんなが目で追っているので目に入りやすいと思います。その動物と観覧者の間には、手すりがあります。

 手すりには、人が寄りかかって見やすい以外に、大切な機能として動物と観覧者の距離を確保し、区分することがあります。

 特に観覧者が動物を見るビューポイントの前には、安全性確保のため、手すりが設けられます。

日本の動物園における施設の安全管理と設計基準

 通常、動物園を設計する際、手すりは檻や金網柵などの動物管理施設から1.5mの距離を取ります。観覧者が手すりに体を預けて、手を伸ばし、動物も檻や金網の間から手足を出したとき、互いに触れない距離、これが1.5mと言われています。高さは、転落防止・立ち入り防止機能を兼ねて1.1mとする場合が多いです。

 最近のコロナウイルスではソーシャルディスタンスとして2mの距離を推奨していますが、2mとは、互いに手を伸ばして届く距離が2mと言われています。

 1.5mの動物と人間の距離では、コロナウイルスのソーシャルディスタンスは保てませんね。

 手すりの強度は、防護柵設置基準に基づいて、「個人利用に対応したP種」と「群衆の利用に対応したSP種」という基準でつくられる例が多いです。一般的にはP種(水平荷重40kgf/m・垂直加重60kgf/m)の基準を用いますが、人気動物の前など人だかりができる場所ではSP種(水平荷重250kgf/m・垂直加重100kgf/m)の基準を用います。

 水平荷重250kgf/mって、花火大会などで、群衆が前に前に押すような場合に用いる強度なので、後ろから人が殺到するような状況が想定されます。

 例えば、アジアゾウの逃亡防止では、アジアゾウの体重(オスで5t、メスで3t程度)の3倍の衝撃強度が加わったとき倒れない柵とします。人間と比べてすごく強固な策となります。

 でも人間の方も、随分強度が高い気がしますが、現状他の基準がなく、施設管理者である動物園が安全性に責任を持つ観点から、この基準を使用せざるを得ない状況です。

日本の動物園における手すりのデザイン

 そんな手すりがどんなデザインなのか?

 以前は、鉄骨造の縦格子の手すりがほとんどでした。最近では、ワイヤーを横方向に張ったもの、丸太などエイジングが施されたものなども見受けられます。手すりの存在を消したり、手づくり感のある雰囲気を醸し出すなどの配慮が行われています。

 日本の動物園では、観覧者の通行、観覧、滞留スペースを広く取り、ゴールデンウィークなどの多客日に対応できるデザインが行われます。そのため、ビューポイントとなる空間の幅、奥行きともに広く、手すりの前には視界を阻害する樹木などの植栽も避けるため、手すりの構造が目立ちやすい傾向にあります。

海外の動物園における手すりのデザイン

 一方海外の動物園では、日本ほどお客さんが一時期に集中しないこと、公共空間におけるマナーや自己責任に違いがあることが要因と考えられますが、手すりの意匠、構造が弾力的なデザインとなっています。

 アメリカのディズニーランドの動物園、アニマルキングダムのアジアエリア(コモドドラゴン、トラ)では、縦方向に擬竹や擬木を用いた、アジアの雰囲気を感じるデザインとなっています。

 ニューヨークにあるブロンクス動物園のコンゴフォレストのコロブスやカワイノシシの展示の前では、木に絡まったツタや非常に簡易な皮付き丸太の手すりのデザインです。

 オランダのロッテルダム動物園のゾウの展示の前では、石材と植栽が手すり代わりとなっています。同じくカンガルーの展示の前では、簡易な削り丸太の手すりとなっています。

海外の動物園から学ぶデザイン

 海外と日本の動物園の園路からの展示景観を比較してみると、前景となる手すり周辺のデザインが大きく異なることがわかります。海外の動物園は、比較的動物を見る観覧空間の幅、奥行きが狭い傾向にあります。

 動物園などの園路は、約20m毎に景観の変化がないと、観覧者の興味が間延びしてしまうと言われています。

 海外では、細かいビューポイントをたくさん取り、ビューポイントの間の空間をしっかり自然風植栽などで見えないようにすることで、次々とシーンが変化していくような見せ方をしています。自然風植栽は当然、動物の生息地の自然を彷彿とするものとしています。

 それに応じて、手すりなども動物の生息している地域の風土を反映したデザインとしているのです。

 また、空間的に滞在する観覧者が少ない空間は、手すりに対する要求強度や構造なども低くなり、形態的な自由度も増していきます。

でも失敗だらけの手すりデザイン

 海外のような手すりができたらなと考えながら、日々の設計を進めますが、なかなかうまくいくことばかりではありません。少し、凝ったデザインにすると、コストもかかります。

 ワイヤーを横方向に張った柵をつくった際は、綺麗だなと思っていたら、子供たちが手すりの上部に顔を出したくて足がかりにしてました。あっという間にワイヤーを締め込んだターンバックルに負荷がかかり、伸びてしまいしました。それ以来、修理しやすく強固なターンバックルに変更したりしてます。

これからの動物園の観覧空間デザイン

 動物園は何のためにあるのか?昨今、動物園における環境学習の重要性が高まっています。子供たちに動物を見せてあげたい動物園から、地球上にともに生きる動物を通して、人類、動物がこれからも共存していく社会づくりを学ぶ動物園へと変化してきています。

 こうした学習を行う舞台として動物園を捉えた場合、観覧空間は動物が生息している環境を彷彿とするデザインであれば、観覧者の共感は得やすくなります。

 こうした視点からは、多客日のレジャーに応じた現状の動物園の観覧空間デザインは見直していく必要があるのかもしれません。

 自然界からの使者である野生動物。

 本来なら自然界で精一杯生きている野生動物を人類が捕獲して飼育していることを踏まえて、今後の動物園のデザイン、運営、そしてそのレジャー利用のスタイルを考えてみませんか?

written by 松崎

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